Gonarthrosis

変形性膝関節症とは

変形性膝関節症とは、関節軟骨や骨などに慢性の変性と反応性の増殖が同時に起こる病気で、悪化すると筋力低下や膝の伸展障害などを起こします。

軟骨は関節のクッションとしての役割を担っていますが、加齢や筋肉量の低下などにより少しずつすり減っていきます。特に膝関節はすり減りによる痛みが生じやすく、骨と骨の隙間が狭くなった結果、骨がトゲのように隆起したり変形したりする恐れがあります。関節をおおう関節包という線維膜の内側にも炎症を引き起こし、分泌された粘り気のある液体が溜まると、いわゆる「膝に水が溜まった」状態になってしまうのです。

変形性膝関節症の症状

  1. Step01初期症状

    起き上がりの際や歩くときに、膝のこわばりや動かしにくさ、鈍い痛みなどを感じるようになります。しかし、時間の経過とともに痛みや違和感が自然と治まることが多く、症状に対してそこまで気にしない方がほとんどです。自覚症状が少ないため症状が進行しやすく、日常生活にさまざまな支障をきたす恐れがあります。

  2. Step02中期症状

    中期に悪化すると休んでいても痛みが治まることが少なくなり、正座やしゃがむとき、階段の上り下りなどで膝が痛み、体を思うように動かしにくくなります。関節の内側では炎症が悪化し、膝が腫れると熱感が生じる恐れもあるのです。また、関節のすり減りが目立つようになると関節液の分泌量も増えて膝に水が溜まり、歩くたびにきしむような音が膝から鳴ることが増えます。

  3. Step03末期症状

    関節の軟骨がほとんどなくなるとクッション機能も失われ、骨同士が直接ぶつかり合います。末期になると歩いたりしゃがんだりすることも困難になります。日常生活の行動範囲が狭まり、精神的なストレスを感じるようになるのです。症状を改善するためにも、早期治療が欠かせません。

治療について

症状が比較的軽い場合は、痛み止めの内服薬や外用薬を使用し、場合によっては股関節内にヒアルロン酸を注射するときもあります。また、運動器リハビリテーションを通じて大腿四頭筋や関節可動域を改善する訓練を行い、下半身の機能を少しずつ強化していきます。他にも膝を温める温熱療法に加えて、足底板や膝装具の製作も可能です。

治療をしても症状の改善が難しい場合は、手術の必要性についても検討します。手術を行う場合は症例に応じて、関節鏡(内視鏡)手術、骨を切って変形を矯正する高位脛骨骨切り術、人工股関節置換術などがあります。

膝関節症にサプリメントは効果がない?

膝関節症(変形性関節症)には、「グルコサミン」や「コンドロイチン」のサプリメントが効果的との意見があります。果たして本当にそうなのでしょうか。サプリメントとして世に広まったのは、1998年のニューヨークタイムスに掲載されたBrody氏の記事がきっかけです。内容は「ペットの犬や地震がグルコサミンとコンドロイチンを摂取したら膝の症状が緩和した」というもので、流行の引き金となりました。

しかし、2006年には、世界で最も権威のある雑誌「The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE」にて、グルコサミン単体、コンドロイチン単体、あるいはその両方を用いても膝の痛みは緩和しなかったと報告されており、2012年、2018年にも予防や治療の効果がなかったと報告されています。

日本整形外科学会において、変形性膝関節症に対する治療で最も推奨されている(推奨グレードA)のは、手術療法以外では生活様式の変更や減量などによる関節の負荷を減らすこと及び運動療法です。なお、膝関節の痛みの原因は、加齢によって関節の軟骨がすり減っている場合だけではなく、関節包内の炎症や半月板損傷・肥満、筋力不足による関節の不安定性、関節買いの靭帯損傷・鵞足部炎・関節リウマチ・痛風・偽痛風・悪性腫瘍などさまざまです。そこで、痛みや腫れがある場合は、整形外科を受診するようにしましょう。

筆者:習志野台整形外科内科 理事長 宮川一郎

出典:梅岡 比俊(著/文)『「健康医学」臨床経験豊富な医師100人が教える!本当はカラダに良いこと 本当はカラダに悪いこと』フローラル出版

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